まあ、わたしのことを気にかけてくださるの?
ご親切なこと。
ええ、「紅天女」はわたくしの夢でしたわ。
でも、月影先生が後継者と認めたのは、わたしの娘と北島マヤ。
権利を譲るだなんて、とんでもない。
わたくしには始めから権利などありませんのよ(笑)。
もちろん月影先生から「才能がない」と言われたからでもありませんわ(笑)。
月影先生は「紅天女」役の女優を、ご自分の思い通りに育てた
かったのですわ。それには若く才能のある少女が必要だった。
今は亜弓が誇らしくさえ思いますのよ。
わたくしの夢だった「紅天女」を、娘の亜弓が演じる日がくるなんて…!
試演がどうなるかわかりませんけれど、今は亜弓が「紅天女」役に
選ばれることを誰よりも願っていますわ。
母親としてのエゴではなく、亜弓自身の人生のために…!